レーザー・その他手術
レーザー・その他手術
レーザー(laser)とは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字で、直訳すると「放射の誘導放出による光の増幅」という難しい言葉になりますが、簡単に言えば、指向性と収束性に優れた、ほぼ単一波長の純度の高い電磁波のことです。
この電磁波を眼の組織に照射するのがレーザー手術です。
ひと口に「レーザー」と言っても様々な種類があり、それぞれの特性によって治療の対象となる病気も様々です。
網膜光凝固術とは、特定の波長のレーザー光で病的な網膜を凝固させることにより病気の進行を抑える治療法です。
直径約0.05㎜~0.2㎜の小さなレーザー光を網膜の組織に照射して熱を発生させ、点状の凝固斑を数十~数百個作ります。
1発の照射は0.01~0.2秒程度とごく短時間なので、全く痛みを感じないか、少しピリピリと感じることがある程度です。
当クリニックでは、マルチカラーレーザーを採用しています。
一般的な網膜光凝固術に使用されるレーザー装置と違い、様々な波長の異なるレーザーを病態に応じて選択することが可能です。
疾患にあわせて適切な波長を選択することで、より安全で効率的な治療が可能になりました。
例えば緑色はヘモグロビンに吸収されるので糖尿病網膜症などに使用します。
網膜の中心である繊細な黄斑部には毒性が少ない黄色を、加齢黄斑変性などの脈絡膜新生血管には網膜の奥まで届く赤色を使用します。
糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、黄斑浮腫、加齢黄斑変性、網膜裂孔・網膜剥離、中心性漿液性脈絡網膜症などが網膜光凝固術の対象となります。
YAG(ヤグ)とは、イットリウム、アルミニウム、ガーネットという3つの元素の頭文字です。
これら3つの結晶に微量のNd(ネオジム)を添加した結晶体に強い光を照射することで得られる電磁波(波長1.064μm)がYAGレーザーです。
白内障手術後、数年経つと、眼内レンズの奥にある後嚢という部分が濁って視力障害をきたすことがあります。
YAGレーザーを照射することで、濁った部分が切り取られ、元のクリアな見え方を取り戻すことができます。
治療に要する時間は約1分、痛みは全くありません。
緑内障の治療とは眼圧を下げることに尽きます。
眼圧を下げる方法として点眼薬を用いることが原則ですが、YAGレーザーを応用したSLT(Selective Laser Trabeculoplasty,選択的レーザー線維柱帯形成術)という方法が開発されました。
眼内を循環している房水の出口付近にあるフィルター(線維柱帯)にレーザーを照射してフィルターの目詰まりを解消することで、眼内から眼外へ房水の流出が促進され、眼圧が下がります。
SLTは、短時間で痛みもなく終了し、副作用が無く、効果が数年持続することが特徴です。
緑内障がある程度進行した患者さんは、眼圧を下げる目薬を何種類も点眼する必要があります。
しかし緑内障点眼薬には、充血や刺激感、目の周りの皮膚が黒ずむなど様々な副作用があり、治療を続けることが困難な患者さんも大勢いらっしゃるのが実情です。
SLTにより、点眼薬を減らすことが期待されるので注目されています。
加齢黄斑変性や強度近視による黄斑症の諸悪の根源は、「新生血管」という質の悪い血管が網膜に生えてくることです。
新生血管の成長を活性化させるVEGF(血管内皮増殖因子)という物質の働きを抑える薬剤を眼内に注射することにより、新生血管の増殖や成長を抑制する治療法です。
当クリニックでは、抗VEGF薬硝子体注射を診察室の片隅ではなく、空気清浄装置が完備されたクリーンな手術室で行っています。
注射するのは、黒目の約3㎜脇の部分に一ヶ所だけで、痛みは感じません。
目の周りを消毒する時間を含め約5分で終了します。
翌日と一週間後に診察に来ていただきます。
薬の効果は永久には続かず、約4週間に1回の頻度で3回以上の治療が必要になる場合が多いです。
当クリニックで扱っている薬剤はどの製品も保険適用ですが、窓口でお支払いいただく概算額は、1割負担の方で片眼1回あたり約16,000円、3割負担の方で約47,000~55,000円と非常に高額です。
70歳以上の方などには高額療養費制度が適用され、1割および2割負担の方は18,000円が上限となっています。
様々な条件により患者さんごとに窓口での支払額は異なりますので、詳細は当クリニック受付にお尋ねください。
生命保険にご加入中の方は、給付金の支払いを受けることができる場合があります。
詳しくはご契約の生命保険会社にご確認ください。
眼瞼下垂とは上まぶたが正常の位置より垂れ下がってしまう状態をいいます。
原因は様々ですが、加齢あるいは長年のコンタクトレンズ装用により、瞼を上下させる眼瞼挙筋の腱膜が傷ついたために生じることが多いとされています。
目を開けている筈なのに瞳が隠れてしまうため、顎を上げないと見づらくなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。
昼過ぎまで調子よく、夕方から症状が悪くなる場合には、重症筋無力症という全然別の病気の可能性もあります。
瞼が重い、顎を上げないと物が見づらい、という症状がある方は、放置せず受診してください。
薬物療法は無く、治療手段は手術しかありません。
日帰りで約20~30分で終了します。
多くの症例は当クリニックで手術治療が可能ですが、眼瞼下垂の種類や程度によって、または患者さんのご希望により、まぶたの病気を専門に扱う医療機関へご紹介する場合もあります。
紫外線の影響などにより、結膜(白目)の組織が角膜(黒目)に入り込んでくる良性の腫瘍です。
多くの場合白色ですが、充血して全体が赤っぽく見えることもあります。
主に鼻側から、鳥の翼を広げたような形で角膜中心に向かって拡がってきます。
初期の段階では、見た目の悪さ以外に自覚症状が無い場合もあります。
翼状片が進行すると、充血や異物感の他、角膜が歪んで乱視が強くなったり、眼球に光が入りにくくなり視力が低下します。
稀に、眼球を動かす筋肉にも影響が及び、眼球運動障害による複視(物が二重に見える)が現れることもあります。
薬物治療は効果が乏しいため、根本的な治療法は手術となります。
当クリニックでは、角膜に入り込んだ病的な組織を切除し、再発防止の薬剤を塗布してから、欠損した結膜をご自身の健康な結膜の一部を採取して被覆する手術(遊離結膜弁移植術)を行っています。
日帰りで30分程度で終了します。
手術をしても、特に若い女性は再発率が高いとの報告があり、患者さんごとに手術のタイミングを見極めることが大切です。
黒目の脇に何か白いものや赤いものがあることに気づかれましたら当クリニックを受診してください。
適切な治療法を提案させていただきます。
主に、大脳基底核の機能障害などが原因となり、目の周りの筋肉が勝手に収縮し、自分の意思に反して目が閉じてしまう病気です。
必ずしも、まぶたのピクピクした動きを伴う訳ではなく、まぶたの動きを自分でコントロールできなくなった状態です。
40歳~70歳代の中高年に多くみられ、男女比は大体1:3と女性に多いと報告されています。
初期症状として「まぶしい感じがする」や「乾いてショボショボする」などの症状があり、ドライアイと間違えられることがあります。
徐々に、「常にまぶたのことが気になってしまう」、「眼をつぶっていたほうが楽」、「片眼をつぶってしまう」などの症状が現れます。
進行すると、まぶたが完全に閉じて事実上の失明状態に至るなど、日常生活に重大な支障をきたします。
眼瞼痙攣に対する根本的な治療法はありませんが、対症治療として目の周りにA型ボツリヌス毒素製剤(商品名ボトックス)を注射することが行われます。
ボトックスを注射することにより、目の周りの筋肉の緊張が緩み、目を開けやすくなります。
80%以上の人に有効で、約3ヶ月効果が持続します。
ボトックス注射には重大な副作用がほとんどありません。
当クリニック院長は、「ボトックス注射療法」の認定医です。